京都高大接続地域ネットワーク(KARN) 第 2 回研修

その入試、一緒に検証してみませんか
データに基づく「求める学生像」の検証方法

入学後の GPA ・ 定着率などの客観データで、自学の入試とアドミッション・ポリシーを点検する

東京都市大学 共通教育部 ・ 教学アセスメント・IR センター 白鳥 成彦
2026-08-27(木)14:10–15:10
キャンパスプラザ京都
公開版:当日の内容から一部を省いています
INTRO

本日の見取り図

02 / 43

前半 60 分の講演で検証の型を共有し、後半 90 分のワークショップでその型を実際に動かす。講演は、後半で手を動かすための道具立てである。

時刻内容本日の位置づけ
14:00–14:10趣旨説明KARN 事務局より
14:10–15:10講演(本パート)入試を検証するための考え方、必要なデータ、分析の型、結果の活かし方
15:10–15:20休憩担当大学の資料に目を通していただく時間
15:20–16:50ワークショップ架空大学の職員として、ポリシーをデータで検証し、打ち手を設計する
16:50–17:00総括KARN 事務局より
講演のゴールは「明日、自学で最初に見るデータが 1 つ決まっている」こと

手法の網羅ではなく、着手できる最小単位を持ち帰っていただくことを目的とする。

KARN 第 2 回研修 ・ 2026-08-27
02
INTRO

お話しする 4 つのこと

03 / 43

本研修の企画にあたり KARN からいただいた依頼を、次の 4 部構成で扱う。最後に、ポリシーの点検と改訂を短く添える。

KARN 第 2 回研修 ・ 2026-08-27
03
INTRO

先に、本日の核を 3 つ

04 / 43

細部に入る前に、本日いちばん持ち帰っていただきたい主張を先に述べる。

この 3 つを、4 部構成で順に具体化していく

PART 1 で難しさの構造を、PART 2 ・ 3 でデータと分析の方法を、PART 4 で改善プロセスへの乗せ方を扱う。

KARN 第 2 回研修 ・ 2026-08-27
04
INTRO

現場の「モヤモヤ」は 3 つに整理できる

05 / 43

年内入試の拡大にともなって語られる不安は、多くの場合この 3 つのいずれかに属する。

MOYA 01

学力は担保できているか

学力試験を課さない区分で入学した学生は、入学後についていけているのか。基礎学力の不足が退学や留年につながっていないか。

MOYA 02

意欲は入学まで続くか

早期に合格が決まった学生の学習が、入学までの数か月で止まっていないか。入学時点での差がその後まで尾を引かないか。

MOYA 03

そもそも「選べない」

定員の充足は経営上の要請であり、譲れない。求める学生像に合う学生だけを選ぶという前提が、そもそも成り立たない大学は多い。

01 と 02 は確かめられていないだけだが、03 は前提そのものである

定員充足という制約は動かせない。だからこそ検証の出発点は「選べているか」ではなく「誰が入ってきているか」になる。この違いが本日の話の軸である。

KARN 第 2 回研修 ・ 2026-08-27
05
INTRO

モヤモヤを検証できる問いに翻訳する

06 / 43

検証の第一歩は分析ではなく、検証できる問いへの書き換えである。主語 ・ 比較対象 ・ 指標 ・ 時点が必要。

よく語られる形検証できる形に書き換えると
年内入試の学生は学力が心配だ 2023 〜 2025 年度入学者について、入試区分別に 1 年次前期 GPA と修得単位数を比較したとき、区分間に差はあるか。差があるなら学部 ・ 学科によって傾向は違うか
合格から入学までに意欲が落ちる 入学前教育の受講の有無別に、入学時プレイスメントテスト得点と 1 年次前期 GPA に差はあるか。受講者と非受講者では、そもそも入学時点の属性が異なっていないか
指定校は面倒見が必要だ 指定校推薦入学者の 1 年次退学 ・ 休学率は他区分と比べて高いか。高いとすれば、離脱は何月に集中しているか
求める学生像に合った学生が来ている ポリシーに掲げた各資質について、入学後に測定している指標が存在するか。存在する場合、区分間 ・ 学部間で差はあるか
書き換えた時点で、必要なデータと分析の型は自動的に決まる

逆に、書き換えられない問いは、いま持っているデータでは検証できない問いである。それが分かること自体が最初の成果になる。

KARN 第 2 回研修 ・ 2026-08-27
06
約 16 分

PART 1

何を検証するのか
3 つのポリシーの順序と、AP が残る理由

3 つのポリシーの検証は、実際には DP ・ CP から進み、AP が最後に残る。なぜそうなるのかを確認したうえで、AP 検証の現実的な出発点を定める。

PART 1 ・ 順序

3 つのポリシーの検証は DP から始まる

08 / 43

3 つのポリシーの検証はいずれも求められる。しかし実際に学内で進むのは DP → CP → AP の順であり、AP は最後まで手がつかないことが多い。

DIPLOMA

DP の検証

学習成果の可視化という別の強い文脈に後押しされて先行する。卒業時の到達、学位授与、進路、卒業生調査。認証評価でも真っ先に問われる。

CURRICULUM

CP の検証

DP に接続する形で続く。GPA ・ 修得単位 ・ 進級判定 ・ 授業評価。科目レベルの成績評価まで降ろせば、手元のデータで組み立てられる。

ADMISSION

AP の検証

最後に残る。入口のデータが教務データとつながっていないうえ、後述する構造的な事情がある。制度として要求されていない場合すらある。

KARN 第 2 回研修 ・ 2026-08-27
08
PART 1 ・ 構造

AP の検証が進まないのは、怠慢ではない

09 / 43

とくに私立大学において AP の検証が進まないのは、定員の充足が経営の前提だからである。この制約を認めたうえで、できることを設計する必要がある。

理想の筋道

AP を掲げ、それに合う学生を選ぶ

求める学生像を定義し、選抜でその資質を確認し、合致した者を入学させる。合致しない志願者は選ばない。

この筋道が成立するのは、志願者数が募集人員を十分に上回り、選抜の自由度が確保できている場合に限られる。

実際に起きること

定員を充たすことが先に来る

AP は検証したい。AP を満たす学生が入学してくればよい。しかし、そうはできないことが多い。年内入試の拡大も、多くはこの制約への合理的な対応である。

この状況で「選抜は妥当だったか」だけを問えば、答えは出ないか、現場を萎縮させるかのどちらかになる。

つまり、まず「どのような学生が入ってきているのか」を把握する

選べているかを問う前に、入ってきた学生の実態を記述する。そのうえで、実態を AP と入試の設計に反映していく。順序を逆にすることで、制約の下でも検証は動き出す。

KARN 第 2 回研修 ・ 2026-08-27
09
PART 1 ・ 前提

入試には、選抜と育成の二つの機能がある

10 / 43

入試を「合否を決める行為」とだけ捉えると、選べない大学では打つ手がなくなる。入試には選抜と育成の二つの機能があり、後者は制約の下でも設計できる。

機能 01 ・ 選抜する

限られた情報から入学後を予測する

調査書、学力試験、小論文、面接、活動報告、資格。いずれも入学後の学びの一部しか写していない。これらから入学後の学びと定着を予測し、合否を決める。

検証すること:入口の情報と入学後の成果を結びつけ、予測が当たっていたかを確かめる。

機能 02 ・ 育成する

入学までに、求める学生像へ近づける

接点をつくり、学びの実像を見せ、合格後の数か月を設計する。入学時点の状態は、選抜の結果であると同時に、入学前に大学が何をしたかの結果でもある。

検証すること:入学前の働きかけが、入学時点の状態にどう表れているかを確かめる。

「入試が良い ・ 悪い」ではなく「この入試は、この大学のこの学部で機能しているか」を問う

同じ入試方式でも、学部の教育内容や初年次のカリキュラムが違えば結果は変わる。検証は常に自学 ・ 自学部の文脈で行う。

KARN 第 2 回研修 ・ 2026-08-27
10
PART 1 ・ 再定義

「入試」ではなく「入口」を検証する

11 / 43

選抜は一点にすぎない。入学前のタッチポイントから初年次教育までを一続きの「入口」と捉え直すと、AP に働きかけられる場所が六つに増える。

STEP 01
タッチ
ポイント

資料請求、相談会、高校訪問、web。関心を持つ母集団がここで決まる。

STEP 02
オープン
キャンパス

学びの実像を見せる場。事実上のミスマッチ予防装置として働きうる。

STEP 03
出願 ・ 選抜
(育成型入試)

従来の「入試」。育成型なら選抜の過程自体が働きかけになる。

STEP 04
合格後の
数か月

年内入試ほど長い。設計すれば最も長く働きかけられる期間になる。

STEP 05
入学前教育

基礎学力と学習習慣の担保。到達基準まで踏み込めば選抜の代替になる。

STEP 06
初年次教育

入学後 1 年までが入口の仕上げ。接続支援とリメディアルを置く。

AP は選抜の一点で満たすものではなく、入学までの過程で(入学後も)近づけていくもの

選抜で AP を確認しきれないなら、確認の場を入試の前後に置く。入口の全体で AP を満たす学生に育てる、という育成型の発想に切り替える。

KARN 第 2 回研修 ・ 2026-08-27
11
PART 1 ・ 概念

入試の妥当性を 3 つの角度で見る

12 / 43

教育測定の分野では、妥当性を複数の観点から検討する。入試に引きつけると、次の 3 つが実務的に扱いやすい。

01 ・ 内容の妥当性

測るべきものを
測っているか

ポリシーに掲げた資質能力が、選抜の各要素に対応しているか。

確認方法:ポリシーの記述と選抜要素の対応表をつくる。対応のない記述、根拠のない要素を洗い出す。

02 ・ 基準関連の妥当性

入学後の成果を
予測できているか

選抜で得た情報が、入学後の GPA ・ 継続率などとどう関係しているか。

確認方法:入試区分別 ・ 入試成績別に入学後指標を比較する。本日の分析事例の中心はここ。

03 ・ 構成概念の妥当性

その資質は
本当に測れているか

「主体性」「協働性」を面接や書類で測ったとして、それが実際にその資質を反映しているか。

確認方法:入学後の行動指標(履修行動、参加状況、学修行動調査)との関係を見る。

まず着手すべきは 01 と 02

対応表をつくる(01)と、いま検証できる項目とできない項目が分かれる。検証できる項目は入学後データと突き合わせる(02)。03 は中期的な課題として置いておく。

KARN 第 2 回研修 ・ 2026-08-27
12
PART 1 ・ 枠組み

検証は 3 つの階層で考える

13 / 43

下の階層ほど着手しやすく、上の階層ほど示唆が大きい。下から順に積み上げるのが実務的である。

階層 3 ・ 一貫性の検証 ポリシーと運用は一致しているか。掲げた要件を課していない区分はないか。募集要項 ・ 実施要領 ・ 判定基準まで遡って点検する 示唆:大 階層 2 ・ 成果の検証 入学後にどうなったか。入試区分別に GPA ・ 修得単位 ・ 継続率 ・ 退学 ・ 休学を比較し、差の有無と大きさを確かめる 階層 1 ・ 適合の検証 ポリシーに掲げた資質能力に、測定している指標が対応しているか。そもそも検証できる状態にあるかを確かめる 着手:容易
階層 1 で止まっている大学は少なくない

「掲げているが測っていない」項目が見つかった時点で、それは立派な検証結果である。認証評価で指摘を受けるのも、多くはこの階層である。

KARN 第 2 回研修 ・ 2026-08-27
13
PART 1 ・ 手順

求める学生像を測れる形に分解する

14 / 43

ポリシーの言葉は抽象的でよい。ただし検証するには、観察できる行動と既存のデータまで降りる必要がある。

ポリシーの記述 観察できる行動に置き換えると 既存データで代替できるもの 取得時点
基礎的な学力を
有している
入学時点で当該分野の基礎知識を保持している プレイスメントテスト得点、入試成績、履修科目、資格入学時
主体的に学ぶ
意欲がある
課された以上の学修に取り組む。履修 ・ 参加を自ら選ぶ 授業外学修時間、任意プログラム参加、図書館 ・ LMS 利用1 年次前期以降
多様な人々と
協働できる
集団での活動に継続的に関与し、役割を果たす PBL ・ 演習科目の評価、学修行動調査の該当設問、課外活動の継続1 年次後期以降
本学での学びに
関心がある
学部の学修内容を理解したうえで進学を決めている オープンキャンパス参加履歴、志望理由の類型、転学部希望入学前 ・ 入学直後
完璧な指標を探さない。いま取れているデータで代替する

限界を明示したうえで使うほうが、測らないよりはるかによい。精度は運用しながら上げていく。

KARN 第 2 回研修 ・ 2026-08-27
14
PART 1 ・ 道具

ポリシーと指標の対応表をつくる

15 / 43

縦にポリシーの記述、横に測定の時点を置いた表を 1 枚つくる。これが検証の設計図であり、アセスメントポリシーの実体(アセスメントプラン)でもある。

求める学生像 入口(入試 ・ 入学時) 過程(在学中) 出口(卒業時) 判定
基礎学力 学力試験、プレイスメントテスト GPA、修得単位数 卒業率、標準年限卒業率 ◎ 検証できる
学修意欲 新入生アンケート 授業外学修時間 − △ 部分的
協働性 入学前教育 (記載なし) (記載なし) ? 検証できない
分野への関心 志望理由書、新入生アンケート(外部アセスメント) 退学 ・ 転学部の理由 進路の分野一致率 ◎ 検証できる

この表が埋まらないこと自体が発見

空欄は「測っていない」の可視化である。ポリシーを下げるか、測定を足すかの議論に入れる。

入試区分の列を足すとさらに使える

「この資質は、どの区分でどう確認しているか」を書き込むと、区分ごとの確認方法の抜けが見える。

KARN 第 2 回研修 ・ 2026-08-27
15
PART 1 ・ 注意

対応表をつくると見えてくる 4 つの型

16 / 43

多くの大学で、次の 4 つのいずれかが見つかる。いずれも珍しいことではなく、見つかった時点で改善の起点になる。

TYPE A

掲げているが、測っていない

ポリシーに書かれた資質に対応する指標が存在しない。もっとも多い型で、認証評価で指摘される典型でもある。

TYPE B

測っているが、使っていない

調査もテストも実施しているが、入試区分と結びつけて見たことがない。データは既にあり、着手のコストは低い。

TYPE C

ポリシーと運用がずれている

「基礎学力を選抜において確認する」と明記しながら、拡大中の区分では確認していない。

TYPE D

全学一律で、学部の実態が消えている

全学共通の指標だけで測っているため、学部ごとの課題が平均に埋もれる。複合大学で起きやすい。

TYPE B から着手するのが最も費用対効果が高い

既に取っているデータを入試区分別に割り直すだけで、議論の材料は相当に増える。

KARN 第 2 回研修 ・ 2026-08-27
16
約 13 分

PART 2

何のデータが要るのか
入口 ・ 過程 ・ 出口の棚卸し

検証に使えるデータの多くは、既に学内のどこかにある。問題は、それが散在していて、つながっていないことである。

PART 2 ・ 棚卸し

検証に使うデータの全体像

18 / 43

入学前から卒業後までを 4 つの時点に分け、それぞれで既に取れているものを書き出す。新しく取るものを考えるのは、この作業の後である。

入学前

接点と準備

オープンキャンパス参加履歴、資料請求、模擬授業参加、出願区分、併願状況、入学前教育の受講と課題提出

入口

選抜と入学時

入試区分、入試成績(科目別)、調査書の評定、出身高校の所在地 ・ 種別、履修科目、資格 ・ 検定、プレイスメントテスト

過程

在学中の学び

学期ごとの GPA、修得単位数、必修科目の成績、再履修、履修登録単位数、学修行動調査、LMS ・ 図書館の利用、面談記録

出口

継続と進路

在籍状況(継続 ・ 休学 ・ 退学 ・ 除籍)と離脱時期 ・ 理由、卒業率、標準年限卒業率、進路、資格 ・ 国家試験、学位授与

この 4 列を 1 人の学生でつなげられるか、が検証の可否を決める

個々の集計値が出せることと、個人単位でつなげられることは別である。つながらなければ「区分別の GPA」すら出せない。

KARN 第 2 回研修 ・ 2026-08-27
18
PART 2 ・ 所在

どこに、誰が持っているか

19 / 43

検証が進まない理由の多くは、分析技術ではなくデータが部署をまたぐことにある。着手前に所在と依頼先を一覧化しておく。

データ主な所管よくある形式実務上の要注意点
入試区分 ・ 入試成績入試課入試システム、Excel合格者ベースで管理され、入学者に絞る作業が要る。区分名が年度で変わることがある
出身校 ・ 調査書入試課紙 ・ PDF が残ることも評定平均は電子化されていても、履修科目は紙のみという例が多い
成績 ・ 単位 ・ 在籍教務課教務システムGPA の算出定義(再履修 ・ 認定単位の扱い)が学部で異なる場合がある
退学 ・ 休学の理由教務課 ・ 学生課届出の自由記述「一身上の都合」が最多。面談記録と併せないと実態が見えない
プレイスメントテスト共通教育 ・ 外部委託委託先の集計表個票が学内に戻っていないことがある。契約時に個票の返却を条件にする
学修行動調査IR ・ 教学部門アンケートシステム匿名回答だと接続できない。学籍番号の取得可否が分岐点になる
オープンキャンパス広報 ・ 入試広報受付システム、名簿入学後に照合する前提で設計されていない。氏名 ・ 生年月日での突合になりがち
進路 ・ 資格キャリアセンター進路調査、就職支援システム未把握者の扱いで数値が変わる。分母の定義を確認する
KARN 第 2 回研修 ・ 2026-08-27
19
PART 2 ・ 最小構成

まず揃える 5 つの指標

20 / 43

すべてを一度に整えようとすると動けなくなる。入試区分 + 次の 5 つがあれば、検証の第一歩は踏み出せる。

3 年分そろえると傾向が見える

単年度では偶然の変動と区別がつかない。過去 3 年分を同じ定義で並べることを最初の目標にする。

KARN 第 2 回研修 ・ 2026-08-27
20
PART 2 ・ 実務

最初の関門は受験番号と学籍番号

21 / 43

入試データと教務データは別のシステムにあり、キーが異なる。この接続表があるかどうかが、検証できる大学とできない大学を分ける。

入試システム キー:受験番号 区分 ・ 得点 ・ 出身校 ・ 評定 広報 ・ OC 名簿 キー:氏名 ・ 生年月日 参加日 ・ プログラム 接続表 受験番号 ↔ 学籍番号 入学手続時に 1 度だけ 作れば、以後ずっと使える 複数区分での受験は 「入学した区分」に一本化 教務システム キー:学籍番号 GPA ・ 単位 ・ 在籍状況 科目別成績 ・ 履修登録 卒業 ・ 退学後も参照できる 保存年限を確認しておく
接続表がないなら、今年度の入学者から作り始める

過去に遡れなくても、来年度以降の検証基盤にはなる。入学手続の事務フローに 1 項目加えるだけで済むことが多い。

KARN 第 2 回研修 ・ 2026-08-27
21
PART 2 ・ 設計

どの単位で集計するかを先に決める

22 / 43

同じデータでも、どの単位で割るかによって見える景色が変わる。集計単位は分析の結論を左右する設計事項である。

基本は「学部 × 入試区分 × 入学年度」

全学一括の平均は、学部間の差を打ち消してしまう。まず学部で割り、その中で区分を比べるのが基本形である。

学科まで割ると人数が足りなくなることが多い。学部で始めて、必要に応じて下ろす。

区分の統合ルールを決めておく

総合型 ・ 学校推薦型(公募 ・ 指定校)・ 一般 ・ 共通テスト利用 ・ その他、の 5 分類が扱いやすい。

年度で名称が変わった区分は、実質的な選抜方法で対応づける。対応表を残しておくと後で困らない。

人数が少ないセルの扱い

10 名を下回るセルは、平均値の変動が大きく、個人が特定されうる。件数を併記し、必要なら年度をまとめる。公表資料では非表示にする判断もある。

分母を明示する

入学者か、在籍者か、当該学期の履修者か。退学者を含むか除くか。分母が変われば率は変わる。表には必ず n を書く。

KARN 第 2 回研修 ・ 2026-08-27
22
PART 2 ・ 前提

データの取扱いで押さえること

23 / 43

教学 IR は個人情報を扱う。手続きを先に整えておくほうが、結果として速く進む。

規程が整っていないことは、着手しない理由にはならない

学内限りの検証であれば、既存の学務規程の範囲で実施できることが多い。まず所管部署と利用目的を確認する。

KARN 第 2 回研修 ・ 2026-08-27
23

PART 3

どう分析するのか
架空の大学で見る検証事例

架空の大学のデータで、分析の型を確かめる。難しい手法は使わず、表計算ソフトで再現できる範囲にとどめる。

PART 3 ・ 型

分析の型は 4 つで足りる

25 / 43

高度な統計手法を用意する必要はない。次の 4 つの見方を順に当てるだけで、検証としては十分に機能する。

型 01

比べる

入試区分別、学部別、受講の有無別に平均値と割合を比べる。もっとも基本で、もっとも使う。

例:区分別の 1 年次 GPA

型 02

分布を見る

平均だけでなく、散らばりと形を見る。二峰性、下位層の厚みは平均には出ない。

例:プレイスメント得点の分布

型 03

時間で追う

学期ごと、年度ごとに並べる。いつ差が開くか、いつ離脱するかが分かる。

例:継続率曲線、年度推移

型 04

関連を見る

入口の指標と入学後の成果を突き合わせる。クロス集計と散布図で十分に始められる。

例:評定平均と GPA の関係

順番も決まっている。比べて、分布を見て、時間で追い、関連を確かめる

「差がある / ない」を見たら、必ず分布に降りる。平均の比較だけで結論を出すと、次のスライドのような読み違いが起きる。

KARN 第 2 回研修 ・ 2026-08-27
25
研修用の架空データ
PART 3 ・ 事例 01

入試区分別の GPA を比べる

26 / 43

架空の A 大学 経営学部(1 学年 480 名)。1 年次前期 GPA を入試区分別に見た結果である。

0.0 1.0 2.0 3.0 4.0 2.71 2.63 2.79 2.82 2.68 総合型n=118 指定校n=142 公募制n= 74 一般n=101 学部全体n=480
区分間の平均差は 0.19

最大(一般 2.82)と最小(指定校 2.63)の差は 0.19。各区分の標準偏差(0.72 〜 0.91)に比べて小さく、平均だけを見れば「大きな差はない」という結論になる。

ここで止めてはいけない

エラーバー(± 標準偏差)の長さに注目する。指定校の散らばりが他区分より大きい。平均が同じでも、中身の構成が違う可能性がある。

架空の A 大学 経営学部、2025 年度入学者。棒は平均値、縦線は ± 1 標準偏差。
本スライドの数値はすべて研修用に作成した架空のものである。

KARN 第 2 回研修 ・ 2026-08-27
26
研修用の架空データ
PART 3 ・ 事例 02

分布に降りると、平均が隠していたものが出る

27 / 43

前スライドで散らばりが大きかった指定校推薦の GPA 分布を、一般入試と重ねて描いた。

010203040 0.51.01.52.0 2.53.03.54.0 1 年次前期 GPA 人数 指定校推薦 n=142 一般入試 n=101 下位の山 上位の山
指定校は二峰に分かれている

平均 2.63 は 2 つの山の中間にすぎず、実際にはその値の学生が最も少ない。平均値がどの学生も代表していない状態である。

次に立てる問い

下位の山は誰か。特定の高校か、特定の履修歴か、入学前教育の未受講者か。下位の山だけを取り出して属性を見るのが次の一手になる。

架空の A 大学 経営学部、2025 年度入学者。GPA を 0.5 刻みで集計。

KARN 第 2 回研修 ・ 2026-08-27
27
研修用の架空データ
PART 3 ・ 事例 03

いつ辞めるのかを時間で追う

28 / 43

退学率は年度末の 1 点でしか見ないことが多い。月次で継続率を追うと、支援を置くべき時期が特定できる。

100%96%92%88%84% 前期成績発表 後期開始期 4 月6 月8 月10 月 12 月2 月3 月 指定校 総合型 一般 91.4%
離脱は 8 月から 10 月に集中

指定校推薦入学者の 1 年次継続率は 91.4%。減少の約 6 割が、前期成績の発表から後期開始までの時期に起きている。

打ち手の置き場所が決まる

年度末の面談では遅い。前期成績発表の直後に、修得単位数が一定を下回った学生への面談を置く、という具体的な設計に落ちる。

架空の A 大学 経営学部、2025 年度入学者 480 名。各月末時点で在籍している者の割合。

KARN 第 2 回研修 ・ 2026-08-27
28
研修用の架空データ
PART 3 ・ 事例 04

入学前教育に効果はあったのか

29 / 43

任意参加の入学前教育について、受講者と非受講者を比べた。この比較には落とし穴がある。

指標受講
n=86
非受講
n=56
差
1 年次前期 GPA2.842.31+0.53
修得単位数20.417.1+3.3
1 年次退学率3.5%12.5%−9.0 pt
入学時プレイス
メント得点
62.854.2+8.6
調査書 評定平均4.123.78+0.34

架空の A 大学 経営学部、指定校推薦入学者 142 名。入学前教育は任意受講。

受講者は、そもそも入学時点で上位だった

下 2 行に注目する。受講者は入学前の時点でプレイスメント得点も評定平均も高い。GPA の差 0.53 のうち、どこまでが入学前教育の効果で、どこからがもともとの差かは、この表からは分からない。

できる工夫 1

入学時点の学力層で層別して比べる。同じ得点帯の中で受講 ・ 非受講を比較すれば、もともとの差の影響を減らせる。

できる工夫 2

必修化して全員に課す。任意である限りこの問題は残る。必修化は、教育上の判断であると同時に検証上の判断でもある。

「効果があった」と言い切らない。それでも意思決定はできる

因果を厳密に示せなくとも、非受講者に退学が偏っている事実は支援対象の特定に使える。

KARN 第 2 回研修 ・ 2026-08-27
29
研修用の架空データ
PART 3 ・ 事例 05

全学平均は、学部の問題を隠す

30 / 43

架空の B 大学(4 学部 ・ 1 学年 1,200 名)。左の全学サマリーは平穏に見えるが、右のように学部で割ると景色が変わる。

全学サマリー

役員会に出ている数字

入学定員充足率97.4%
1 年次 GPA 平均2.71
1 年次退学率3.5%
年内入試比率58.0%

いずれも前年度から大きな変化はない。この表だけを見れば「特段の課題はない」と報告される。

学部入学者充足率GPA退学率年内比率
経営学部452103%2.663.2%61%
情報学部318106%2.882.4%48%
人間科学部271102%2.792.9%55%
国際学部12972%2.346.8%74%
国際学部は充足 72% ・ 退学 6.8%

在籍者数が小さいため、全学平均にはほとんど影響しない。数が少ない学部ほど、全学平均に埋もれるという構造がある。

全学一律のアセスメントポリシーの限界

「全学部共通の基準で測定 ・ 比較する」と定めている場合、学部固有の課題を拾う仕組みがない。学部ごとの求める学生像に対応する指標を、少なくとも 1 つは置く必要がある。

KARN 第 2 回研修 ・ 2026-08-27
30
研修用の架空データ
PART 3 ・ 事例 06

入口の穴を科目まで特定する

31 / 43

架空の C 工科大学。ポリシーには「数学 ・ 理科の基礎学力を入学者選抜において確認する」とあるが、区分別に確認方法を並べると運用がポリシーと合っていないことが分かる。

入試区分入学者 数学の学力確認数学プレイス
メント基準未達
物理未履修1 年次退学率判定
一般204数学 ・ 理科の学力試験8.3%2.0%1.5%◎ 一致
公募制推薦118基礎学力試験(数学)14.4%9.3%2.5%◎ 一致
指定校推薦312書類 ・ 面接のみ38.1%27.6%6.4%? 不一致
総合型96課題レポート ・ 口頭試問22.9%18.8%3.1%△ 部分的
基準未達者の退学率は達成者の 4 倍を超える

基準未達者 208 名の 1 年次退学率は 9.6%、達成者は 2.1%。入口の学力差がそのまま離脱に結びついている。

打ち手は入試だけではない

指定校を絞ることが難しいなら、担保の場を入試の外に置く。入学前教育の必修化と到達基準の設定、初年次のリメディアル配置、募集段階での学びの実像の提示。

架空の C 工科大学、2025 年度入学者 730 名。数学プレイスメントの基準点は学部が定める到達水準。

KARN 第 2 回研修 ・ 2026-08-27
31
PART 3 ・ 作法

結果を読むときの 4 つの約束

32 / 43

検証は、数字を出すことより読み違えないことのほうが難しい。次の 4 点を会議の共通ルールにしておく。

約束 01

「差がない」も立派な結果

区分間に差が出ないことは、選抜が機能していないことを意味しない。むしろ入学後の教育が差を埋めている可能性がある。差がないという結果は、現場の不安を鎮める根拠として使える。

約束 02

相関を因果と呼ばない

「オープンキャンパス参加者は退学が少ない」は、参加が退学を防いだことを意味しない。もともと志望度の高い層が参加している。効果を語るなら、比較する集団の条件を揃える工夫が要る。

約束 03

人数を必ず添える

率だけを示さない。n が 20 名のセルで 5 pt の差は、1 名の増減で動く。表と図には常に n を書き、少数のセルは強調しない。

約束 04

区分を評価しない、仕組みを評価する

「指定校が悪い」という結論は、議論を止めるだけで改善につながらない。問うべきは「この区分で入学した学生に、必要な支援が届く仕組みがあるか」である。

検証の目的は、誰かの責任を明らかにすることではない

入試 ・ 広報 ・ 教務が同じ数字を見て、それぞれの持ち場で打てる手を決めるための材料をつくることにある。

KARN 第 2 回研修 ・ 2026-08-27
32
約 10 分

PART 4

結果をどう活かすのか
入試設計と入学前 ・ 入学後教育への還流

検証は報告書を書いて終わるものではない。打ち手に変換し、その打ち手が効いたかをまた測る。この循環を教育マネジメントとして回し続けることが目的である。

PART 4 ・ 循環

検証、打ち手、再測定のループ

34 / 43

1 周を 1 年で回す。入試 ・ 広報 ・ 教学のカレンダーに、あらかじめ 4 つの時点を書き込んでおくことが定着の条件になる。

STEP 1 ・ 5 〜 7 月 検証する 前年度入学者の 1 年次 データが揃う時期。区分 別に集計し、論点を出す STEP 2 ・ 7 〜 9 月 打ち手を決める 次年度の入試要項 ・ 入学 前教育 ・ 初年次設計に 間に合う時期に確定する STEP 3 ・ 9 〜 3 月 実施する 入試 ・ オープンキャンパス ・ 入学前教育を運用する。 記録を残すことを含める STEP 4 ・ 4 月 〜 測り直す 打ち手の前後で同じ指標 を比べる。ここが次年度の STEP 1 になる 同じ指標で測り直せるように、STEP 2 の時点で測定方法まで決めておく
1 周目から完成させようとしない

初年度は指標が粗くてよい。同じ指標を 3 年続けることのほうが、精密な指標を 1 年だけ測ることより価値がある。

KARN 第 2 回研修 ・ 2026-08-27
34
PART 4 ・ 打ち手

打ち手の起点は 3 つある

35 / 43

検証で見つかった課題に対して、打てる手は入試の中だけにあるわけではない。起点を 3 つ持っておくと、実現可能な案が出やすい。

起点 01

入試の設計を変える

選抜要素の追加、出願要件の変更、判定基準の見直し、区分ごとの募集人員の調整。

効果は大きいが、要項の確定時期と高校への周知期間の制約を受ける。年内入試の縮小は歩留まりに直結するため、単独では動かしにくい。

起点 02

募集 ・ 広報を変える

オープンキャンパスでの学びの実像の提示、体験プログラムの設計、高校訪問での情報提供、出願前の面談。

入学前のミスマッチを減らす効果が期待できる。参加履歴を記録しておけば、入学後の追跡と結びつけられる。

起点 03

入学前 ・ 入学後の教育を変える

入学前教育の必修化と到達基準の設定、初年次のリメディアル配置、成績不振者への面談の時期設計。

もっとも自学の裁量で動かしやすく、効果測定も設計しやすい。まずここから着手する大学が多い。

入試 ・ 広報 ・ 教務が同じ検証結果を共有していることが前提になる

結果を入試課だけで持っていると、打ち手も入試の中だけに閉じてしまう。報告の場を 3 部署共通にすることが、実は最大の仕掛けである。

KARN 第 2 回研修 ・ 2026-08-27
35
PART 4 ・ 設計

打ち手と測定指標はセットで決める

36 / 43

「効いたかを何で確認するか」を決めていない打ち手は、次の年に評価できない。この 1 行を書けて、はじめて設計が完了する。

検証で見えたこと起点打ち手 効果を確認する指標確認時期
指定校で数学を確認していない入試 出願要件に数学の履修 ・ 評定条件を追加。基礎学力確認テストを面接日に併実施 数学プレイスメント基準未達率(区分別)、必修数学科目の単位修得率翌年 5 月
翌年 9 月
入学前教育が任意で受講率 55%教育 必修化し到達基準を設定。未到達者には入学直後に補講を配置 受講率、到達基準達成率、1 年次前期 GPA と修得単位数の分布翌年 4 月
翌年 9 月
離脱が 8 〜 10 月に集中教育 前期成績発表直後に、修得単位が基準を下回った学生への面談を制度化 面談実施率、後期の継続率、10 月時点の在籍率(区分別)当年 10 月
翌年 3 月
OC 体験参加者は離脱が少ない広報 体験プログラムの回数を増やし、総合型の出願前面談で参加を推奨 出願者の OC 参加率、参加 ・ 非参加別の 1 年次継続率(人数を併記)当年 11 月
翌年 3 月
協働性を測る指標が存在しない教育 学修行動調査に該当設問を追加。演習科目のルーブリックに観点を明記 調査の該当設問の回答分布、演習科目の観点別評価の分布翌年 12 月
右 2 列が、そのまま次年度のアセスメントポリシー改訂案になる

ポリシーの改訂は、理念の書き換えから始めるより、測る指標の追加から積み上げるほうが現実的に進む。

KARN 第 2 回研修 ・ 2026-08-27
36
PART 4 ・ 伝達

誰に、どう伝えるか

37 / 43

同じ検証結果でも、相手によって示すべき粒度と語り口が変わる。資料は 1 種類では足りない。

相手関心のありか示すもの避けること
役員会 ・ 理事会 定員充足、退学率、財政への影響、認証評価への対応 全学の推移と学部別の内訳を 1 枚に。課題と打ち手、必要な資源を明示する 手法の説明に紙面を割くこと
教授会 ・ 学部 自学部の学生の実態、担当科目との関係 学部別 ・ 科目別の数字。つまずいている科目と時期を具体的に 全学平均だけを示すこと
入試委員会 次年度の要項に何を反映するか、募集人員の配分 区分別の入学後成果と、要項確定までのスケジュール 区分の優劣として語ること
高校 ・ 高大接続 送り出した生徒がどうなっているか、指導への示唆 集計された傾向、入学前に身につけておくとよい学習の具体 個々の生徒 ・ 個別高校の特定につながる情報
学内の担当者 自分の持ち場で何を変えるか 集計の定義と再現手順。翌年も同じ数字を出せる形で残す 属人的な集計にとどめること
検証結果は、高校に返せる情報でもある

「本学の指定校推薦で入学した生徒は、数学の学び直しに苦労している」という事実は、高大接続の対話の出発点になる。それが本ネットワークの趣旨にも重なる。

KARN 第 2 回研修 ・ 2026-08-27
37
約 7 分

PART 5

ポリシーの点検と改訂
そして、このあとのワークショップへ

検証の積み重ねは、最終的にアドミッション・ポリシーとアセスメントポリシーの改訂に帰着する。最後にその点検の観点を確認する。

PART 5 ・ 点検

ポリシー点検の 8 つの観点

39 / 43

自学のアドミッション・ポリシーを開いて、次の 8 点を確認する。3 つ以上に「いいえ」がつけば、改訂の検討に入る。

  • 掲げた資質に、測定している指標があるか1 つも対応する指標がない項目は、検証不能の状態にある
  • 各入試区分で、その資質を確認しているか書けない区分がポリシーとの不一致点になる
  • 学部ごとの固有性が反映されているか全学一律の記述だけでは、学部の実態を拾えない
  • 高校生に理解できる言葉で書かれているか受験生が読んで、何を準備すればよいか分かるか
  • ディプロマ ・ カリキュラムポリシーと接続しているか入口で求める資質が、教育課程と卒業時の到達目標につながっているか
  • 測定の時期と方法が定められているかアセスメントポリシーとして、誰がいつ何で測るかが明記されているか
  • 結果を審議する場と周期が決まっているか報告先と頻度が決まっていなければ、検証は続かない
  • 過去 3 年で 1 度でも改訂したか検証しているなら、どこかは変わっているはずである
ポリシーを下げることも、正当な選択肢である

測れない資質を掲げ続けるより、いま測れる範囲に記述を合わせ、測定を足しながら記述を戻していくほうが、内部質保証としては誠実である。

KARN 第 2 回研修 ・ 2026-08-27
39
PART 5 ・ 論点

測れない資質にどう向き合うか

40 / 43

「主体性」「協働性」「多様性の理解」。多くのポリシーが掲げ、多くの大学が測れていない。取りうる態度は 3 つある。

態度 01

記述を実態に合わせる

いま測れる資質に記述を絞る。ポリシーの見かけは地味になるが、掲げたことは必ず検証できる状態になる。

認証評価の観点からは、掲げて測らないより一貫している。

態度 02

代替指標を置いて測り始める

完全には測れなくとも、関連する行動を指標にする。任意プログラムへの参加、演習科目の観点別評価、学修行動調査の設問。

限界を明示したうえで使う。多くの大学にとって現実的な選択。

態度 03

測定を新たに設計する

ルーブリックを整備し、初年次科目に共通の評価観点を置く。中期的な取り組みとして、教育課程の側から設計する。

資源を要するが、カリキュラム改革と一体で進めれば実現しうる。

避けたいのは、掲げたまま何もしない状態を続けること

どの態度を選ぶかは各大学の判断でよい。判断したこと自体を記録に残し、次の点検で見直せるようにしておく。

KARN 第 2 回研修 ・ 2026-08-27
40
PART 5 ・ まとめ

本日お伝えしたかった 4 点

41 / 43
POINT 01

選べないなら、まず誰が入ってきているかを知る

定員充足という制約は動かせない。「選抜は妥当だったか」の前に「どのような学生が入学したか」を記述する。そこから AP と入試の設計に返す。

POINT 02

感覚を、検証できる問いに書き換える

主語 ・ 比較対象 ・ 指標 ・ 時点の 4 つが入った問いに直す。書き換えられない問いは、いまのデータでは検証できない問いである。それが分かること自体が最初の成果になる。

POINT 03

平均を見たら、必ず分布と時間に降りる

区分間の平均差は小さくても、分布は二峰に分かれていることがある。全学平均は学部の課題を隠す。集計単位の選び方が、結論を左右する。

POINT 04

打ち手と測定指標をセットで決める

「効いたかを何で確認するか」まで書いて、はじめて設計が完了する。返す相手ごとに粒度を変え、既存の検証プロセスに乗せて、はじめて仕組みになる。

明日、自学でまず見るデータを 1 つ決める

過去 3 年の入学者について、学部別 ・ 入試区分別の 1 年次前期 GPA と修得単位数、そして 1 年次末の継続状況。この 1 枚から始められる大学は多い。

KARN 第 2 回研修 ・ 2026-08-27
41
TO WORKSHOP

このあとのワークショップについて

42 / 43

15:20 から、皆さんには架空の大学の職員になっていただく。IR 室から提出された年次報告ダッシュボードを読み、その大学のポリシーを検証していただく。

状況設定

皆さんは、ある大学の教学マネジメント委員会のメンバーである。来月の役員会までに、アセスメントポリシーの点検結果と改善提案を報告しなければならない。

手元には、IR 室が提出してきたダッシュボードと、自学のポリシーがある。

やっていただくこと

ワーク 1 ポリシーの記述を 1 つずつ「データが支持する」「実態と乖離がある」「そもそも検証できない」に仕分ける。はじめの 6 分は個人で考えていただく。検証できない項目を最低 1 つ見つけていただきたい。

ワーク 2 入試 ・ オープンキャンパス ・ 入学前教育のいずれかを起点に打ち手を設計する。こちらもはじめの 5 分は個人で。効果を何で測るかまで書けて完成である。

架空のデータだからこそ、遠慮なくツッコミを入れていただきたい

ただし、そこに現れる課題は、どこかで見た景色のはずである。休憩の間に、お手元の大学の資料に目を通しておいていただきたい。

KARN 第 2 回研修 ・ 2026-08-27
42

ご清聴ありがとうございました

ご質問は、このあとのワークショップの机間巡回でもお受けします。
ワークショップの資料一式は架空データのため、学内の FD ・ SD 研修にそのままお使いいただけます。

東京都市大学 共通教育部 ・ 教学アセスメント・IR センター
白鳥 成彦
Mail: nshirato@tcu.ac.jp
Web: https://www.tcu.ac.jp/
1 / 69  ·  ← → 移動  ·  F 全画面  ·  P 印刷